エベレスト登頂記 特集記事-SPECIAL-
2018.07.02
隊全員で列をなして、真っ暗闇の中をヘッデンの光を頼りに登っていく。
地面のコンディションはかなり悪く、通常であればスタートして1時間半くらいでクランポンポイントになるそうだがこの日はハイキャンプの時点で雪と氷のミックスだった。そこそこの急登ではあったが、メンバーはズルズル滑りながらもクランポンを履かずに進む。経験の豊富なシェルパは雪道に慣れているせいかあまり滑らないのは流石だ(たまに転んでたけど)。30分ほどで諦めてクランポンを履くことにする。
出発から1時間半、空が明るくなってきた。クランポンポイントをすぎてからは明らかに斜度が増し、張られているフィックスロープをユマールしながら登る。恐らく50-60度くらいの斜度かな。通常であればそこまでキツイと感じるほどのルートではないのだが、やはり空気が薄いのでとにかく息が切れる。一歩一歩、足を踏み出すために息が切れてしまうのだが筋肉は全く負担を感じない。トレーニングでは筋持久力よりも肺活量を重視すべきだったのかもしれない。
隊全体としても息を整えられるようゆっくりゆっくり歩いているように感じたが、それでも他の隊をガンガン追い越しながら進んだ。ちなみに、サムとソラジは元気そうに走りながら登ったりしていた。この二人、尋常じゃなく強い。
2時間ほどで夜明けを迎える。朝日と同時に初めて5700-5800mくらいの高度からヒマラヤ山脈を眺める。
いやぁ凄い!!!
自分の目線と同じ高さで眺める山脈は、見ているだけでドキドキするほど険峻(けんしゅん)でかっこいい。
何度も何度もユマールをし時には全身でぶら下がって横目に山脈を見ながら休憩しながら進む。
ゆっくりゆっくり進んでおよそ3時間。とうとう山頂が見えてきた。
山頂が見えると途端に体力が限界を迎えるのはなんなんだろう。いつもゴールが見えてからの最後の100mくらいが一番きつくてとても長い。結局、体力の限界なんてものは自分の気分次第で設定されるもので、人間の本当の底力にはまだまだ先があるんだろうね笑。
気力を振り絞り、登頂を果たす。登頂時刻は7時半。ハイキャンプを出発してから3時間半。通常タイムが5時間半ということなのでなかなかのハイペースで登ったらしい。このペースで登れればエベレストでも体力的には問題ないとのお墨付きをもらえたことは嬉しかった。
そして山頂からの景色がこちら。
ドドーーン。どこの星だこれは。凄まじい絶景に息を飲む。
左上の黒い山が世界5位の高峰マカルー(8,463m)。メンバーは左からビカス、サム、クンタル(隊長)、ソラジ。
それから、カメラ機材はベースキャンプでお留守番をしてもらうことに決めた。実は本番に向けた試金石としてザックの中には7Kg分のカメラ機材を積んでいたのだが、正直なところ思ったよりもキツくて余裕がなかったのだ。
条件がよければ問題なく登れるとしても、悪天候に見舞われた場合に少しでも体力に余裕がある方が生存確率が高まることを考えると、今回は初めての挑戦ということもあるので命の方を優先させていただこう。ちなみに7Kgというのは酸素ボンベ一本と同じ重さであり、酸素ボンベ一本でデスゾーンに滞在できる時間を5-6時間増やすことができる。
下りは1時間半くらい。ルートの半分くらいは懸垂下降をひたすら繰り返して降りられるのでとても楽ちん。ハイキャンプに戻ると、ソラジ&サム&グンタルがおめでとう動画をしてくれた。(無理やり言わせてないよ)
ハイキャンプで昼食を食べてからロブチェに降りる。筋肉の負担は大したことなかったので、休憩すれば元気に歩くことができる。とりあえず今日はロブチェに宿泊し、明日ベースキャンプに戻ってからは2-3日の休養とする。
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