エベレスト登頂記 特集記事-SPECIAL-

2018.07.01

【エベレスト登山】Day16 高度順応のためロブチェピーク(6145m)へ出発

4月19日(Day16)は高度順応のためにロブチェピーク(6145m)に向けて出発し、ロブチェハイキャンプで一泊する。ちなみにロブチェピーク(ロブチェイースト)はエベレスト街道に3つある代表的な6000m峰(メラピーク、アイランドピーク、ロブチェピーク)で最難関と言われる山。

行程はベースキャンプ(5300m)からゴラクシェプ(5100m)を越えロブチェ(4900mへ)降りたあと、5300mのロブチェハイキャンプまで登り返してテン泊。翌朝の夜明け前にピークに向けて出発をする。ベースキャンプまでは2時間半くらいでロブチェからハイキャンプまでは2時間弱なので、休憩やランチを除いて4時間から4時間半くらいのトレッキングとなる。

ヴォイテック&リッキーは別行動でCamp3まで上がって高度順応を行うとのこと。ヴォイテックは昨年のエベレスト挑戦の際、通常の高度順応では不十分だったことから2度に渡りCamp3で順応するようシェルパと相談をして決めた。Camp3は崖の上に滞在しなければならないのでシェルパはかなり嫌がるし、追加の酸素ボンベが必要となる。

さて、今回は初めて後続で合流したサム&ソラジ、スヴァイ&キャロラインとのトレックとなる。4人ともとても経験豊富でサム&ソラジは山岳ガイドでエベレストは3度目の挑戦。スヴァイ&キャロは過去にデナリ、マナスルに登頂している。スヴァイは高度順応が上手くいっておらず、食欲不振と風邪に悩まされていた。ベースキャンプに長く滞在しているとほぼ全員がクンブ咳という喘息症状に見舞われるが、スヴァイは隊の中で第一号のクンブ咳患者となった。

午前中はとても天気が良くエベレストがよく見えていた。ベースキャンプとゴラクシェプの間のトレッキングコースはクンブ氷河を横目に何度もエベレストが見える楽しい道。

「絶好のサミットデーだねぇ、いっちゃう〜?」

なんて言いながら和気あいあいと歩を進める。

それにしても、このメンバーはとても強い、、、。これまでは自分のペースで5分に1回くらいは他のメンバーを待たなければならなかったが、このメンバーだと結構なスピードで歩いても一度も離れることなくついてくるし、むしろ余裕そう。

ゴラクシェプでホットチョコレートを飲みながら30分ほど休憩し、ロブチェで昼食とする。

ロブチェでは新たなメンバーであるインド人のビカスと合流。このビカスが自分のパートナーとなり、エベレスト登頂まで同じテント(ベースキャンプ以外)で生活をすることになる。ビカスはサム&ソラジと同じクライミングスクールの同期でこれまた健脚。

スヴァイは高度を落としても風邪の症状が改善しなかったので、残念ながら大事をとってロブチェ待機とする。

ロブチェからハイキャンプまでの標高差300mは1回ショートレストを取っただけで、それ以外は一歩も止まらず結構なスピードで歩き続けた。標高5000mを越えているので呼吸が結構キツかった。道中では一部、崖にロープが張られているところで女性が動かなくなって渋滞していたがそれ以外は危険なところもあまりなく難易度は大キレット以下。

下の写真の赤線がルートとなっていて、鳥のような形をした大岩の右側を超えていくとハイキャンプがある。

ハイキャンプに到着すると、すぐにキャンプサイト作り。15分くらいで手早く3張りのテントを完成させて、テントマットを敷きシュラフを広げ、あっという間にキャンプサイトの出来上がり。

とても気になったのがキャンプサイトに食べ残したラーメンがそのまま捨ててあったこと。氷点下のハイキャンプではおそらくこのラーメンは分解されないのでは、、、?   6000mを超えるロブチェピークはトレッキングと違って登山許可が必要な山なので、もうちょっと環境に配慮しようよと感じずにはいられなかった。

一方、植村さん著の「エベレストを越えて」の中で、「約40年前はゴミが多く残っていた日本隊のテントサイトと比較してゴミを残さない海外の登山隊の姿に驚きと羞耻を覚えた」という一節があった。今でこそ日本人はモラルが高く某アジア諸国のことを民意が低いなどと言うけれど、日本だって40年前の高度経済成長の最中では決してモラルが高かったわけではなく、経済成長の弊害となる環境汚染を経験する中で環境意識が高まったことを忘れてはいけない。

登山に限らず、海外に行くと他国の文化に理解を示さず自身の価値観で偉そうに影でグチグチ言う人がいるけれど、それこそ民意の低さを感じてならない。謙虚さと相手への尊敬を持ちつつ、積極的に交流をする中で登山環境を大切にするべきだと伝えていこう。

さて、話を戻してテント内について。ロブチェハイキャンプやエベレストのキャンプ1、キャンプ2は基本的に同じようにテントを設営するスタイル。外は寒いので基本的にはテント内で待機するがずっと横になっていると酸素不足になりがちなのでたまに外で体操などをする。

食事の時間になると外から呼ばれて入口のチャックを少し開けると隙間から食べ物がサーブされる。

17時になるとスープ!スープ!

17時半になるとダルバート!ダルバート!

18時になるとデザート!デザート!

半開きの入口から食べ物を供給されるのはまるで動物園で飼育されている気分になる。

だが、好きなことやって寝てれば食べ物にありつけるというのは、貴族だと思えば悪くない笑

明朝は3時半に朝食、4時に出発するらしい。高山ではよくある行程だが、こういう時は食べるのと小便以外の時間は出来る限りヒーリングミュージックを聞きながら眠る。たとえ眠れなくとも目を閉じてリラックスしていれば十分体力の回復ができる。これは日常生活も同様で、ヒーリングミュージックを聞きながら眠ると睡眠の質が向上するので睡眠時間を減らすことができる。

ということで、この手記を書いているのは食事を終えた18時半。先ほどまでガスで何も見えなかったが天気が好転してきた。明日は晴天だろう。最後の小便に行き、眠ることとする。

今日は一枚も写真を撮らなかったので画像は後日ロブチェから撮影したロブチェピークのみ。

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